麻生班、桐島班に続く第3の捜査一課「宍戸班」。
この物語は現代版必殺仕事人をイメージして書かれた作品だという。
つまり…この昼行灯と呼ばれている宍戸が中村主水かっ!違うっ!!
ここまでの判断、早かったんですが「新シリーズ」のようなので班長実は有能説お待ちしております。実は元締めとか!ほら!仕事人同士、顔知らなかったりするし!
さて、麻生班といえば犬養隼人が。桐島班には宮藤賢次や葛城公彦が所属しており様々な事件を解決に導いている。
しかし今回の宍戸班。この2班に比べれば凡庸な班長と凡庸な部下たちという印象を受ける。良くも悪くも普通。
麻生班なんてOBに毒島も、今回出てくる探偵の鳥海もいるんだぜ…人間としてアレだけど刑事としては優秀なんだぜ。そういった面々からすると、この「第3の捜一」は見劣りしてしまう。
『必殺仕事人』はその当時話題になった時事ネタを主体にした話も多い。
裏口入学やネズミ講なんていう社会問題から花粉症や彗星の接近なんていうネタもある。
『祝祭のハングマン』ではその作法を倣ってか、実際に大きく報道された事件を模した事件が仕事人の手によって裁かれている。
「三軒茶屋で一家4人が惨殺された」といえば世田谷一家殺害事件だろうか。
現実でも遺留品が多数残されており、その大半がどこでも買える大量生産品であることで捜査が難航している。
「八王子市内の交差点で起きた事故」は池袋暴走事故だろう。
アクセルとブレーキ踏み間違いを認めず、プリウスの欠陥を主張する被告という図は、「自分の非を認めない」から「別の何かが悪い」のではなく、「自分が間違いを犯すわけがない」から「別の何かが悪い」と思ってるんだろうなとモヤモヤした。これが年齢的なものの固執した考えなのか、地位による傲慢な考えなのかはわからない。
では、「アイドルの自殺」というのはテラスハウスの木村花さんの件だろうか。
恋愛リアリティ番組というものをほとんど観ておらず、どのようなことが起こってこんな結果になってしまったのか私は語る言葉を持たないのだが、SNSのキュレーションの性能については考えさせられる機会となった。
恋愛リアリティ番組に興味のない私が「SNSで誹謗中傷があった」と知るのは彼女が亡くなった後だ。入り浸っていたのはずの世界のどこでそんな話題が盛り上がって(燃えあがって)いたのか私は知らない。私のフォローしていた人たちの興味の外だから流れてこないのだ。
SNS上での情報は、興味の方向性で自動的に取捨選択をされて手元に届く。無作為に大量の情報が垂れ流されているわけではなく、作為的にシステムは「オマエの好きそうな情報」を選んでいる。
陰謀論界隈やどこそこの政党支持にアンチ、贔屓のスポーツチームの話題など。自分と同じ興味があり、尚且つ「似た考え、意見を持つ」人と情報と繋がれる仕組みなのだ。
インスタで映えスイーツを見て「私も行きたい!写真撮りたい」と思うのも、ついったで他の人がみんなガチャでSレア引いているのを見て「今なら当たる気がする!」と思うのも、みんなみんな「オマエの好きそうな情報」を享受しているからだ。本当は極々一部の情報だから太公望は3万つぎ込んでも出なかったんだ。
世界の人と繋がれるようで、自分の置かれる身近な世間としか繋がってないSNS。簡単に徒党を組めるし、簡単に世界が自分1人を責めるように思える。
特異な世界に対する法整備はまだまだ遠く感じる。
さて『必殺仕事人』といえば主役である中村主水を語らねばいけない。
彼は同心の中では昼行灯を演じているが、剣術の腕はピカイチ。本来は優秀なのだが仕事人として生きるために出世をしないよう、あのようなふるまいをしている。『2007』では閑職に追いやられるけれど、それは仕事人としてはめちゃくちゃ都合がいいことなのだ。婿入り先の嫁姑の反応を考慮しなければ…
彼は念仏の鉄と出会い、鉄の周りでの理不尽な事件を目の当たりにして仕事人の道を選んだ。しかし、他の仕事人たちが何故この仕事をしているのかはあまり知らされていない。
この物語の主役は中村主水とは程遠い。じゃあ、渡辺小五郎か?というのも違う。ポジション的には、元締めであり、殺しにも参加する三味線のおとわ。殺し技的には鍛冶屋の政か経師屋の涼次か。
私は組紐屋の竜が好きだなぁ。…ではなく。
彼女、春原瑠衣は感情が顔に出すぎるきらいがある。
外に感情が出すぎてしまえば、仕事人として見なければいけないものが見えなくなってはしまわないか。仕事人としての前に「刑事として」なのでは?って気もしなくもない。
回を追うごとに刑事としては昼行灯、仕事人として優秀な…と成長なんかしてしまうのだろうか。え。何それさみしい。
『私刑執行人』。この一件はそのようにSNSで祭り上げられたのだという。
声の小さき者たちの集うSNS。何がきっかけで大きな波紋を呼ぶかはわからない、不発弾のように気味が悪い。
祝祭のハングマン
中山七里
2025/5/8
嗤う犯人を、絶対許さない。 ――「ハングマン」がついに動き出す! 建設会社のサラリーマンがトラックにひかれる事件が起きた。 どうやら殺人らしい。 警視庁捜査一課の春原瑠衣は事件を追ううちに、 被害者と同じ会社に勤める自身の父親にも疑惑の目を向け始め…。 司法で裁けないのであれば、陰の存在〝ハングマン”が悪に鉄槌を下す! 私立探偵ら謎の人物が跋扈する衝撃のミステリー。
