『作家刑事毒島の嘲笑』というタイトルだが、普段のあの「うふふふふ」は既に嘲笑に聞こえている。嘲る風ではないのだけれど、「心の中ではほくそ笑んでるな」と感じてしまう。普段の毒島真理は腹の内が見えない奇妙な男として映る。
過去作の読者であれば『最後の事件』の経緯を聞いて「まさか」と声をあげる淡海に、「まさかと思うのはヤツを知らない証拠だ」と浅井課長と一緒にツッコむことだろう。
毎度、「黒幕はコイツなんだろうな」と予想がつくシリーズではあるが、この作品の醍醐味はいつも『嘲笑』する毒島真理だ。
…私がこのシリーズに求めているのはミステリではなくホラーなのかもしれない。
さて、「某サービスセンターでフリーダイヤルを廃止した途端にクレームが激減した」という話が作中に出てきた。タダだから簡単に批判も誹謗中傷も出来てしまうのだ、と。
確かにSNSでもそういった何らかの対立を煽るような投稿を目にする機会が増えたと感じる。
仕事柄、「サービスセンター」のようなものとは関わる機会が多い。
掛ける側ではなく掛けられる側である。
ある時の話。問い合わせ先にナビダイヤルと東京の固定電話を用意した。
基本はどこからかけても一定の料金のかかるナビダイヤルを、携帯やIP電話からは東京を想定した。
いざ、サービスを始めてみると東京の固定電話には大阪からじゃんじゃん電話がかかってきた。
傾向を分析することが仕事なので、彼らは「ナビダイヤルは高いから文句を言うなら03の固定電話の方が安い」と踏んでいるのではないか?と仮説が出た。
24年10月より一律料金となったが、それまではかけ放題プランのようなものに入っていない限り、東京-大阪間の通話料金は45秒で44円程。ナビダイヤルの3分約10円(固定電話の場合)より遥かに高額なのだが…
皆、ちゃんと自身の契約しているプランを把握していると信じたい。
「全国一律いくら」のようなかけ放題のプランに入っていると「実質タダみたいなもの」と思われているのかもしれない。サブスク系サービスは如何に「入っている⁼お金を支払っている」という事実を忘れさせて続けさせるかが勝負なのだ。
そうすると彼らのことを「カネ出してでも言わせてもらう」本気の方々と呼ぶのは少し異なるかもしれない。少々金は払うが、費用は安ければ安いほど良い。
「何故フリーダイヤルを設けないのか」の一点のみを問う声もあった。おまえみたいなどうでもいい質問を防ぐためやったんやけどなぁ…
クレームは、暇を持て余し金払ってでも相手をして欲しい寂しいヒトたちの仕業であるとコールセンター勤務の知人は言う。
なるほど。それならホストクラブとか行った方が費用対効果的にも気持ちよくなれると思うよ。
弊社ね、絶対謝らないから。
作家刑事毒島の嘲笑
中山七里
2024/9/5
右翼系雑誌を扱う出版社が放火された。思想犯のテロと見て現場を訪れた公安の淡海は、作家兼業の刑事・毒島と出会う。犯罪者をいたぶることが趣味の彼は公安の考えも小馬鹿にし、淡海は反発。衆議院選挙が迫る中、さらに極左集団が絡む事件が勃発、ついに魔の手は候補者に向かう。テロは防げるのか? 歪んだ正義を毒舌刑事が斬る痛快ミステリー。
